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医療判例紹介-未確立療法と説明義務

2013.05.13

【最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決】

(事案)
医師に乳がんと診断され、乳房の膨らみを全て取る胸筋温存乳房切除術による手術を受けた患者が、当該乳がんは腫瘤とその周囲の乳房の一部のみを取る乳房温存療法に適しており、患者自身も乳房を残す手術を希望していたのに、医師が十分な説明を行わないまま患者の意思に反して胸筋温存乳房切除術を行ったとして、診療契約上の説明義務違反等を主張。
判決は下記判旨のように述べ、担当医師には、患者の乳がんについて乳房温存療法の適応可能性のあること及び乳房温存療法を実施している医療機関の名称や所在を知る限りで明確に説明し、患者が胸筋温存乳房切除術を受けるか、あるいは乳房温存療法を実施している他の医療機関において同療法を受ける可能性を探るか、そのいずれの道を選ぶかについて熟慮し判断する機会を与えるべき義務があったとした。

(判旨)
「医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務があると解される。本件で問題となっている乳がん手術についてみれば、疾患が乳がんであること、その進行程度、乳がんの性質、実施予定の手術内容のほか、もし他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などが説明義務の対象となる。」
「医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には、患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上、判断することができるような仕方でそれぞれの療法(術式)の違い、利害得失を分かりやすく説明することが求められるのは当然である。」
「未確立の療法(術式)ではあっても、医師が説明義務を負うと解される場合があることも否定できない。少なくとも、当該療法(術式)が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについては、患者が当該療法(術式)の適応である可能性があり、かつ、患者が当該療法(術式)の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては、たとえ医師自身が当該療法(術式)について消極的な評価をしており、自らはそれを実施する意思を有していないときであっても、なお、患者に対して、医師の知っている範囲で、当該療法(術式)の内容、適応可能性やそれを受けた場合の利害得失、当該療法(術式)を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務があるというべきである。そして、乳がん手術は、体幹表面にあって女性を象徴する乳房に対する手術であり、手術により乳房を失わせることは、患者に対し、身体的障害を来すのみならず、外観上の変ぼうによる精神面・心理面への著しい影響ももたらすものであって、患者自身の生き方や人生の根幹に関係する生活の質にもかかわるものであるから、胸筋温存乳房切除術を行う場合には、選択可能な他の療法(術式)として乳房温存療法について説明すべき要請は、このような性質を有しない他の一般の手術を行う場合に比し、一層強まるものといわなければならない。」



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