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「冤罪(えんざい)」を考える

2011.10.31/【堀田 伸吾】

10月29日、新潟ユニゾンプラザにて、「布川事件」を考える市民集会(新潟県弁護士会主催)が開催されました。
さわやかな秋晴れの午後でしたが、100名を超える大勢の方に参加いただき、この事件に対する市民の関心の高さがうかがわれました。
ちなみに、集会では当事務所の石山弁護士が司会を担当しました。おつかれさま。

布川事件とは、昭和42年に茨城で発生した1件の強盗殺人にまつわる「冤罪(えんざい)」事件です。
冤罪-すなわち、本当は無実であるのにこの事件の犯人にされてしまったのが、今回の集会のゲストである桜井昌司さんと杉山卓男さんでした。
二人は、「犯人は二人連れの男」という警察の見立ての中で浮かび上がった対象者の中から、濡れ衣のターゲットとされました。
事件からまもなく、桜井さんを別件逮捕した警察は、代用監獄で連日深夜まで取調べを行い、桜井さんを「自白」させました。
その翌日、杉山さんを別件逮捕した警察は、同じく杉山さんを追及して「自白」させました。

逮捕当初、二人は、身に覚えのない強盗殺人を否定しましたが、取調官から、
 「お前が犯人だ」
 「アリバイが言えないのは犯人の証拠だ」
 「お前の母ちゃんも、早く本当のことを言えと言っている」
などと連日言われ続け、何を言っても犯人にされてしまうと自暴自棄になり、嘘の自白をしてしまったのです。

それでも二人は、裁判で真実を話せば分かってもらえると信じていました。
しかし、裁判官は、自白調書を根拠に、二人に対し無期懲役の判決を言い渡しました。

こうして二人は、いわれのない罪で、29年間もの刑務所生活を強いられました。

平成8年、仮出獄した二人は、裁判のやり直しを求めて再審請求を行い、平成21年にようやく再審開始決定が確定しました。
再審の裁判では、捜査機関にとって都合の悪い証拠の多くがそれまで隠されていたことが明らかとなり、二人がよどみなく「自白」する場面を録音したテープも、実は編集されたものであったことなどが判明しました。

平成23年5月24日、裁判所は、二人に対し無罪の判決を言い渡しました。
判決では、二人の自白調書には不自然な点が多く、取調官の誘導等により作成されたものである可能性があるとして、自白調書の信用性が否定されました。
こうして、事件から実に44年近い歳月を経て、二人の無実が証明されたのです。

集会でご講演いただいた桜井さんと杉山さんは、非常に明るいお人柄で、冤罪により失った時間をユーモアを交ぜて語っておられました。しかし、その明るさの中でも、理不尽な冤罪被害を受けたことに対し、滲み出る強い怒りや深い悲しみが感じられました。

お二人は、起訴した以上は有罪にするために証拠隠しさえ行う検察の問題点、密室で作られた自白調書を偏重する裁判官の問題点などを、実体験を踏まえて指摘されました。そして、取調べ状況の全面可視化(録画録音)、捜査機関の全面証拠開示の必要性を強く訴えておられました。

郵便不正事件での検察の不祥事が記憶に新しいところですが、今も昔も、「冤罪」の危険は存在しています。
制度改革の必要性とともに、法曹の意識改革の必要性をあらためて痛感しました。
 



ショージ&タカオと、懇親会にて

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