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弁護士の報道対応② 刑事弁護の論理とメディアの論理

2014.03.06/【堀田 伸吾】

刑事事件(特に捜査段階)における弁護人のメディア対応が消極的である理由は、①事件報道の背景で述べたとおりです。
すなわち、「守秘義務」と「最善努力義務」を負う弁護人にとって、被疑者の言い分を外部に公表するためには、①被疑者の同意、②公表が被疑者にとって利益になることの確信という2つの基準をみたすことが必要と考えられます。
また、弁護人は、事件報道が過熱し、被疑者が犯人であると決めつけるようなかたちで報道がなされることにより、冤罪が生じたり、被疑者のプライバシーや名誉が損なわれることをおそれます。メディア側も当然、同様の問題意識は感じており、自主的な報道指針を策定するなどして、予断や偏見を生まない事件報道を目指しているところです。しかしながら、いわゆる犯人視報道がなされることは今なお少なくありません。


一方、メディア側が、事件発生直後、情報量が少なく内容も不確定である段階から積極的に事件報道を行うのはどうしてでしょうか。
ある報道関係者の論稿では、その最大の理由は「いち早く事件の真相を知りたいという読者・視聴者の関心にこたえること」にあるとされています。
また、別の報道関係者の論稿では、事件報道の意義は、「事件報道によって、広く社会全体で悲しみや怒りを共有し、社会が一体となって背景にある原因を考え、再発防止や根絶に取り組む」ところにあるとされています。
他方で、メディアが捜査段階の事件報道を重視するのは、日本の刑事司法の実態を反映したものであるとの指摘があります。
現在の刑事司法では、多くの事件で、捜査段階での被疑者の自白が裁判でもそのまま採用され、事件の全体像を解明する鍵となっている。つまり捜査段階で既に事件の真相がほぼ解明されているという実態がある。さらに裁判員裁判では、事件の核心部分に絞ったコンパクトな審理が行われるため(精密司法から核心司法への転換)、必ずしも裁判の中で事件の背景が明らかにならないことがある。刑事司法がそのようなものである以上、事件報道こそが国民の関心にこたえる拠り所になる、という論理です。


弁護人の論理は、冤罪防止や適正手続の監視という、重要な目的に裏付けられています。
一方、メディアの論理もまた、国民の知る権利や社会の安全といった重要な目的を持つものです。
さらに、事件報道の受け手である国民の受け止め方にも耳を傾けることが必要であり、刑事司法の変化の中で、事件報道のありかたについて、さまざまな立場から議論していくことはこれからも欠かせません。

 

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