「預金」は遺産分割の対象外?
2016.09.02
「預金も遺産分割の対象となり、相続人で話し合ってどのように分けるかを決める必要がある」というのが、一般的な感覚ではないかと思います。しかし、法律の実務においては、「預金は遺産分割の対象外」とする最高裁判所の判例が示されています。
預金のように可分な財産については、遺産分割を経ることなく、相続開始とともに当然に法定相続分に従って分割承継されるので、遺産分割の対象にならないというのが、現在の考え方です。
このような判例の考え方に従えば、金融機関としては、遺産分割協議が行われていない場合であっても、相続人の一人から自己の相続分のみの払い戻しの請求があれば、これに応じなければならないことになります。
ところが、金融機関においては、他の相続人との間でトラブルになるのを避けるため、相続人全員の同意がなければ払い戻しに応じてくれないのが実情です。もっとも、相続人の一人が金融機関を裁判で訴えて、「自己の相続分を支払え」という判決を得た場合には、裁判という手間はかかるものの、最終的には金融機関も払い戻しに応じてくれます。
このような判例の考え方と、金融機関の実務の隔たりを解消するために、現在、最高裁判所において、「預貯金は遺産分割の対象外」という判例を見直すための審理が行われています。
判例変更となった場合には、預金を払い戻すには遺産分割協議等を経ることが必要となり、相続人が協議前に自己の相続分のみの払い戻しを請求することができなくなるなどの影響が出てくるものと思われます。