本文へジャンプする

弁護士ブログ

ブログ

裁判員制度3年後検証

2012.04.13/【堀田 伸吾】

2009年5月21日に裁判員制度が始まって、今年の5月21日で丸3年が経ちます。
制度開始以来、私自身もいくつかの裁判員裁判の弁護人を担当しました。総じて、裁判員のみなさんの、証拠とじっくり向き合い、被告人の話に真剣に耳を傾ける熱心な姿が印象に残っています。

さて、裁判員法附則第9条では、「この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとする」と定められています。
施行後3年間で実施された裁判員裁判の件数は実に5000件近くに及び、多くの市民のみなさんが裁判員として審理に参加しました。その中で、さまざまな問題点も見え始めています。
これに関し、日本弁護士連合会では、本年3月15日付けで「裁判員法施行3年後の検証を踏まえた裁判員裁判に関する改革提案」を出しています。
日弁連の提案には、以下のような内容が含まれています。

-対象事件の拡大-
裁判員裁判の対象事件は、現在のところ、社会的にも注目される重大犯罪(法定刑の重い罪)に限られています。
日弁連提案では、裁判員裁判の対象を押し広げ、法定刑の重いものに限らず、有罪・無罪等の争いがあり、かつ被告人側が裁判員裁判での審理を求めた事件についても、対象とすべきであるとしています。

-証拠の全面開示-
昨今、証拠の取り扱いを巡る捜査機関の様々な不祥事が問題となっています。そのような問題を防ぐには、捜査機関側の手持ち証拠が全て被告人側にも開示されるしくみを制度化することが必要です。
日弁連提案では、公判前整理手続等における全証拠開示に向けた改正が提言されています。

-裁判員に対する説明-
現在の裁判員制度では、裁判員選任手続の際に、裁判長が裁判員に対し、「被告人は無罪と推定され、検察官において『常識に照らし被告人が有罪であることがほぼ間違いない』といえるレベルまで証明する必要がある」という刑事裁判の大切なルールを説明しています。
しかし、事件終了後の裁判員経験者の感想の中には、選任直後は緊張のため説明内容が記憶に残らなかったとの声もありました。
そこで、日弁連提案では、刑事裁判のルールについて、説明を徹底する方向での改正が求められています。

-裁判員の負担軽減-
裁判員裁判では、重大事件を扱うことから、審理の結果、判決で死刑の言い渡しがなされるなど、裁判員にとって大きな心理的負担やストレスが生じることがあります。そのため、裁判員の心理的ケアが不可欠ですが、現行法はこの点が必ずしも明文化されておらず、日弁連提案で改正明示が求められています。
また、裁判員経験者に課される守秘義務についても、事件が終わってからも長期にわたり重い心理的負担を課すものであることから、義務の範囲を限定すべきとの提言がなされています。

-死刑の評決要件-
死刑制度についてはさまざまな議論がありますが、死刑が人命を剥脱するという重大な刑罰であることは明らかです。
日弁連提案では、裁判官、裁判員の負担軽減の見地からも、死刑判決については全員一致の評決を要件とすべきであるとしています。

-少年事件の問題-
被告人が未成年(少年)である事件では、少年の成長発達や社会復帰、プライバシーの問題等、大人の事件とは異なる観点からの審理が要求されます。
そこで、日弁連提案では、少年が対象となる裁判員裁判について、少年法の理念の明確化、手続的な保障などが求められています。

このように、裁判員制度にはまだまだ課題も多く、今後十分な検証が必要です。

ご相談の予約はこちら

  • 新潟事務所:025-225-7220

受付時間:9:00~17:00(月~金)
夜間、土日も可能な限り対応します。

初回相談料
3,300円 [税込]/30分

(個人の方の場合)

ページの先頭へ戻る