別居中の生活費
別居中であっても、離婚が成立するまでの間は、夫婦には互いの生活を助け合わなければならない法律上の義務があり、これを婚姻費用分担義務(民法760条)といいます。
婚姻費用分担義務は、収入の多い者から収入の少ない者へ生活費を渡すことを内容とします。いまの日本社会では、妻から夫へ生活費の分担を求めることになるのがほとんどでしょう。
分担を求めることができる生活費の額は、夫婦それぞれの収入額や、どちらが子どもを育てているか、どちらが住宅ローンを負担しているか等を考慮して決められますが、計算の目安となる算定表が公表されており(標準算定方式・判例タイムズ1111号285頁以下参照)、家庭裁判所ではこの標準算定方式に従って生活費の額が決められることがほとんどです。
そこで、別居中の相手方に生活費の分担を求める場合には、この標準算定方式による算定表で計算した場合の生活費の額がいくらになるかを念頭に置いて相手方と交渉されるのがよいでしょう。インターネットのサイトなどでも生活費分担額を試算できるものがありますが、あらかじめ弁護士にご相談いただければ、より正確な金額をアドバイス差し上げることができます。
生活費の分担を求める場合には、もう一つ、とても大切なことがあります。それは、「相手方に生活費の分担を求めた証拠」をきちんと残しておくことです。
相手方と話し合ってもどうしても生活費の分担額が決まらない場合、次は家庭裁判所の調停や審判の手続きへ進むことになりますが、その場合には、相手方がいつから生活費を分担すべき義務を負うのか、すなわち「生活費分担義務の始期」が必ず問題となります。現在の裁判実務では、別居開始日ではなく、相手方に生活費の分担を求めた日が生活費分担義務の始期になると判断される場合がほとんどです。
したがって、別居が始まったら、できる限り早期に相手方に生活費の分担をきちんと求めること、それも、ただ口頭で求めるのではなく、文書で求め、きちんと証拠を残しておくことがとても重要になります。事前に弁護士にご相談いただければ、請求書の書き方や文書の出し方など、具体的なアドバイスができます。
生活費の分担を求めることは、ご自身の生活を守るのみならず、養育されているお子様の生活を守ることにもつながります。やむなく別居に至ってしまった場合には、なるべく早期に、勇気を出して、相手方にきちんと生活費の分担を求めることをお勧めします。
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