交通事故による人的損害(消極損害)
交通事故により被った損害のうち、人的損害については、①積極損害(交通事故によって被害者が支出を余儀なくされた損害)と、②消極損害(交通事故がなければ得られたであろう利益の損失による損害)、③慰謝料に大別されます。
消極損害として認められる主なものとしては、休業損害、逸失利益が挙げられます。
1 休業損害
交通事故に伴う入通院により仕事を休んだ場合、それにより減少した収入が損害として認められます。
現実に収入が減少した場合はその減少した分が損害として認められますし、有給休暇を利用した場合にも休業損害として請求することができます。
また、家事従事者(専業主婦など)についても、家事ができなかった期間がある場合には、休業損害を請求することが可能です。
2 逸失利益
逸失利益とは、本来得られた利益であるにもかかわらず交通事故によって得られなかった利益、すなわち、交通事故によって将来の収入が減少したりなくなってしまったことに対する損害です。
交通事故により後遺障害が残った場合や死亡した場合には、この逸失利益が問題となります。
(1)後遺障害による逸失利益
後遺障害による逸失利益は、①事故前の収入などを基礎収入として、②交通事故によ
ってどれほどの労働能力が失われたか(労働能力喪失率)、③労働能力喪失期間、
などを加味して算定されます。
① 基礎収入
原則として事故前の収入を基礎として算定されます。ただし、現実の収入が賃金セ
ンサス(年齢や職業、学歴などに応じた平均的な収入を示したもの)の平均額以
下の場合、平均賃金を得られる蓋然性が高ければ、賃金センサスに基づいた基礎
収入が認められることがあります。
家事従事者や就労前の学生なども、原則としてこの賃金センサスに基づいて基礎収
入が算定されます。また、高齢者の場合でも、就労の蓋然性が高い場合には、賃
金センサスに基づいて基礎収入が算定されることがあります。
② 労働能力喪失率
労働能力喪失率については、後遺障害の等級に基づいた労働能力喪失率表を参
考としつつ、被害者の属性や後遺症の部位・程度などを総合的に考慮して判断しま
す。
③ 労働能力喪失期間(就労可能年数)
労働能力喪失期間(就労可能年数)は、症状固定日から起算し、原則として
67歳までの期間とされています。67歳を超える方については、平均余命の2分
の1が労働能力喪失期間とされる場合もあります。
④ 中間利息の控除
逸失利益の算定にあたり、「中間利息を控除」することになります。逸失利益とは、
本来は将来受け取るべきお金を現時点でまとめて受け取るということですので、
例えばそのまとめて受け取ったお金を金融機関等に預ければその利息分の
利益を得ることができます。そこで、その利息分をあらかじめ差し引きましょう、
という考え方に基づいています。
(2)死亡による逸失利益
死亡による逸失利益は、①事故前の収入などを基礎収入として、②一定の生活費を控
除しつつ、③就労可能年数などを加味して算定されます。基礎収入や就労可能年数、
中間利息の控除についての考え方は、基本的に後遺障害による逸失利益と同様です。
① 基礎収入
高齢者の場合、特に年金の逸失利益性が問題となります。これについては、年金の
性質等によって肯定される場合と否定される場合があります(年金と逸失利益)。
② 生活費の控除
被害者が死亡した場合、これまでの収入が得られなくなる反面、生活費もかからなく
なります。そのため、逸失利益の算定に当たっては被害者が支出したであろう生活費
分を差し引きましょう、という考え方に基づいて、一定の割合で生活費を控除すること
になります。
具体的な割合としては、概ね以下の基準が採用されています((財)日弁連交通
事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟/損害賠償額算定基準」)。
a 被害者が一家の支柱だった場合
⒜ 被扶養者1人:40%
⒝ 被扶養者2以上:30%
b 女性(主婦、独身、幼児等を含む):30%
c 男性(独身、幼児等を含む):50%
もっとも、上記基準はあくまで原則的な基準であり、個別の事情によって異なる割合
による生活費の控除が認められることがあります。
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